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| 桜問題提起スレッド |
| 知らない間に米国市民になっていた | |
| 投稿者：三銃士参るさん | 投稿日時： 2016/04/24(日) 14:33:22 |
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信じられないような話だが以下の記述は私の一身上に起こった真実である
話は６０年代に遡る K大医学部を卒業し国家試験を経た後 外科研修医として勤務しているうちに サンフランシスコ南郊のS大学医学部に研修留学することになった 研修は一週間のガイダンスが終わり アシスタントとして手術に立ち会うことから始まった 米国の医療レベルは日本とは比較にならないほど進んでいて 圧倒される毎日だった 病院での実習は８時間 自宅での勉強はもっと時間がかかった 膨大な量の専門書をまるごと記憶しなければならない 寝る間もないほどに懸命に働き２年が過ぎた ある朝医局に出ると 机の上に連邦政府からの手紙が置いてあった 中身は「召集令状」だった 突然のことで頭がくらくらしたが 直ぐに病院長秘書に電話を入れ これは何かの間違いではないかと問い合わせた 秘書は手紙を持ってくるようにというので持参すると これは間違いではないという答えが返ってきた 説明によると 徴兵はSSN（厚生年金番号）所持者の中からランダムに選ばれるのだという ベトナム戦が激しくなると連邦政府は徴兵制度を復活し S大学病院からもオーストラリアからの研修生が一人既に召集されたという | |
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| 1 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:35:07 |
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NYの日本企業にいる高校時代の友人に電話して確認してみた
彼の会社でも日本からの出向者に召集令状が舞い込んだのだが 幸い顧問弁護士の努力が実り 兵役につかなくても良いことに決まったばかりだという K大に連絡して助けを求めると同時に 領事館にも出かけて善処方を頼み込んだ 電話帳から大きな弁護士事務所を探し出しては事情を説明したが どこも引き受けてくれない 後でわかったことなのだが 当時はちょうどベトナム戦が拡大し始めたときで 米陸軍は急遽外科医を大量に補充しなければならなくなったときだったのである 結局２週間後にヒューストン市郊外にある米陸軍メディカル本部に出頭し 陸軍医療教育センターに配属されることになった 何度か両親と電話で連絡を取り合ったが 電話の向こうでは怒りと落胆で声も出せない様子だった 陸軍医療教育センターに到着した翌朝簡単な身体検査があり軍装が支給され 午後は質疑応答と米国への宣誓式が行われた 一応の行事が終わると６名づつのグループにに分かれ担当医官が紹介された 指定された部屋に入ると机の上に様々なフォームが用意されており 読む暇もないまま医官の指示に従って次ぎ次ぎにサインさせられた | |
| 2 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:36:38 |
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その日はそれで終わり翌朝から研修が始まった
研修期間は６か月だと言われた グループの仲間は高校を出たばかりの者が殆どで 大学卒もいたが医学のことは全く知らない様子だった 私の場合は日本政府認定の外科医であり、S大病院長の研修証書もあったせいか 間もなく他の実習生とは別の仕事をさせられることになった 医療実習ではなく陸軍医療制度を学ばされたのである 英和辞書を片手に分厚い規則書を読むのが仕事だったが １週間後には全てを読み終えることができた 報告書にそのことを書き入れると 翌朝First lieutenant （中尉）に任官したことを知らされた 中尉になると一緒に入隊した実習生と離され 宿舎も食堂も別の場所に移動させられた 仕事もなく教育センター内をぶらぶらしているうちに更に一月近くが経った ある朝教育センター長付きの軍曹が面会にきて 貴官の教育実習は全て終わったので 一週間後に移動命令が出されるだろうという報告があった 何も実習らしいことはしていないのに変なことをいうやつだと思ったが 陸軍とはそういう組織なんだろうと理解した 行く先は教えてくれなかった | |
| 3 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:37:45 |
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二日後の朝、同じ軍曹が面会に来て
教育センター長が貴官に合いたいそうなので同行してくれるかといわれた 行ってみるとランチへの招待だった ランチの途中でセンター長からCaptain(大尉)に任官したことを知らされた 何もしていないのに随分早い出世だとは思ったが そういうことは昇進に関係ないらしい これも米陸軍のやり方の一つなんだろうということで納得した 翌週ヒューストン国際空港から飛び立った 行く先はベトナムである 軍用機ではなく民間チャーター機だった 乗客（？）が少ないうえにスチュワーデスが大勢いて とにかくサービスが良かった シアトルで一泊し、東京で一泊してからサイゴンに向かった 羽田空港には両親が出迎えてくれ その夜は銀座で両親と食事を一緒にすることができた 私の父はやはりK大医学部出身の産婦人科医で 日本橋蠣殻町の箱崎川沿いにある大きな病院を経営していた 私が米陸軍大尉の軍服姿で現れたせいか 急に大人びて見える息子に違和感を感じたらしく 緊張しているように見えた ベトナムでは第４４陸軍医療部隊（旅団）に配属されるので サイゴンに到着した翌朝 部隊本部があり任務地でもあるロンビンに向かった | |
| 4 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:40:08 |
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後に調べて分かったことだが
１９６６年の１２月には２００名しかいなかった部隊が 半年後には７８００人に膨れあがっていたのである 戦況が急速に拡大しつつあり 死傷者の数が増え始めていた時期に任官したのである 病院には一応の設備が整ってはいたが 寄せ集め部隊のせいか運営上に問題があり 指揮系統が頻繁に変わるために 医療には最も重要な人間関係ができあがらなかった 私は最初から最後まで終始ロンビンにいたが 戦線拡大とともに医療部隊は１９に増えていた なるべく戦地に近い場所を選んでのことだったので 次第に医療部隊の中からも死傷者が出るようになっていった 就任した当初はそれでもまだ余裕があり 民間人やベトナム兵の医療処置ができたが 直ぐに状況は変わり 外科医の数は恒常的に不足するようになっていった 医師不足のためにベトナム人医師は勿論 フィリピン、シンガポール、韓国、香港、台湾などから搔き集めてはいたのだが なかには日本からボランティアでやってきた医師も何人かいた 優秀だと感じたのは台湾とシンガポールからの医師だった | |
| 5 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:41:26 |
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寝る暇もないほどに昼夜働かなければならなかったが
まもなく傷病兵を格納する場所が足りなくなり 戸外に大きなテントを幾つも立てて そのなかで手術を行わざるをえなくなった ロンビンで働き始めて２か月ほど経つたころ不思議なことが起った 連邦政府から内容証明書つきで米国市民権証明書が送られてきたのである 市民権を要求した覚えはないし聞かれたこともない 狐か狸に騙されたような気分になった 証明書を持って司令官事務所に行き これはどういうことなのかを説明してくれと聞いたら 調べるから数日待ってくれということだった 一週間後に事務所長から呼び出しがあり以下の説明を聞かされた 貴官の書類をヒューストンから取り寄せて調べてみたところ 貴官は上級将校として監督責任を持つことに同意している 監督責任を持つ将校は米国市民でなければならないという陸軍の規則がある しかも貴官は米国市民になることにも同意している この変更は今となっては不可能だから了承してもらいたいという内容だった 青天の霹靂である | |
| 6 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:42:30 |
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ヒューストンに赴任した翌日
宣誓式の後で沢山の書類にサインさせられたことを思いだした その中に米国市民権取得申請書類があったに違いない サインする前に全部に目を通す時間も余裕もなかったので 盲判を押すように片っ端からサインをしたのがいけなかった 日本の法律では外国籍を取ると日本国籍を失うと書かれているが 米国市民になったからといって日本国籍を手放す気にはさらさらなれない 結局そのままに年月が過ぎ 今でも日米両国の市民のままでいる ３年いた間にどのくらいの数の傷病兵を手術したのか. 記憶もないし記録も残っていない 毎日昼も夜も大型ヘリが出入りして 次から次へと絶え間なく死傷者を搬入してくる なにもかも緊急でありとにかく数をこなすことが求められた 一年も経たないうちに私の担当部署での部下は２００名に膨れ上がり 誰が何処で何をしているのか把握するのが極めて難しくなった 中隊長ではあっても手術の数が減るわけでもないし ちょっと手が空けば指導にまわらなければならない | |
| 7 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:43:44 |
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手術数でいえば
大学病院に勤務するもっとも忙しい外科医の数十倍もの数をこなしたに違いない 始めの中は多くは簡単な手術が多かったが 次第に複雑な手術が増えていった 忙しかったガおかげで複雑な手術を素早くこなせるようになったし 救急医として症例判断を早く正確に行える実力がついた 死に物狂いで立ち向かえば必ずなんとかなるという自信もついた 後年この時期の経験がどのくらい役になったかを思うと実に感慨深いものがある 着任一年後にはMajor（少佐）に任官した 本人の意思に関係なく昇進するものらしい 周囲の者のなかには戦時中は出世が早くなるというものがいたが 米陸軍とはそういうものだと理解した 病院内にCaptainは大勢いたがMajorは流石に少なかった 少佐になったからといって手術の数を減らすことはできない 大尉時代よりも遥かに忙しくなり 本部だけでなく各地に広がった病院に出かける仕事が増えた 行けばそこで又手術しなければならないし 同時に実地教育をしなければならなかった 病院は１９もあるから日程のやりくりが大変だった 少佐になると専用ヘリを使えるようになったのでこれには助けられた | |
| 8 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:44:50 |
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出向いた先はどこも戦地の真っ只中にある野外病院で雰囲気が殺気だっていた
怒鳴り声が飛び交う修羅場だった たまには休暇を与えてやりたいのだが補充が利かない 可哀そうだが仕方がなかった そのうち忙しいというのに 各地の医師から電話で質問がくるようになった どれもこれも救急だから急がなければならないし 丁寧に答えてあげなければならない 相手が理解できない場合はヘリで急行しなければならない それでますます眠る時間がなくなっていった 傷病兵の両親や兄弟とか 政財界の大物たちから感謝状がくるようになり ほどなく長いキャビネットが一杯になってしまった 有名な映画俳優や芸術家からの感謝状もあった 手術しても助からなかった兵士の親からの感謝状を読むのは辛かった 日常なら助かった場合もあっただろうと思うとじっとしていられなくなる そういう手紙を貰った翌日は余計に忙しく手術をしたものだった タイプ文字ではなく下手でも手書きのものには温かみを感じる 読むと新しい力が湧き出るのを感じたものだ 礼状を自分で書きたいがそういう余裕はなかったので 副官に命じて必ず返事を出すようにしていた | |
| 9 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:46:36 |
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彼は私の専用ヘリのパイロットだったのだが
よく気が合ったので病院長に頼み込んで副官に採用してもらったのである 本部で時間が取れるときはなるべく病院長と食事をすることにしていた 運営上のことで山ほど話すことが多かった そういうときは必ず休暇を取らないかと勧めてくれてはいたが 病院長自身も休暇を取ることはなかった 病院長はMajor General (少将)であり 名門George Washington University Medical School 出身だった ワシントンDCのWalter Reed Army Institute of Researchdeで外科部長をしていたときに ベトナム戦争陸軍病院設立のために国防長官の命令で赴任したのだった 彼の話によると米陸軍メディカル部隊に集まった一般召集兵のなかから 私のようにMajorに昇進した例を他に知らないということだった 任期が終わったら是非Walter Reed Army Institute of Researchdeに推薦したい とまで言ってくれた これは名誉なことではあったが受ける気にはならなかった | |
| 10 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:47:56 |
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激戦地に３年もいると身体ばかりではなく精神状態もおかしくなる
私は酒が飲めなかったので 夜緊張を解き安眠を得るにはマリワナが一番効果があった 一服しただけで身体が宙に浮くように軽くなり睡魔が襲ってきた しかし日中に吸うことはなかったし手術に影響が及ぶこともなかった 忙しいなかで３年が過ぎ退役することができたのだが 病院長の懇願がありもう２年延長することに決めた しかし延長の１年目が過ぎるころには朝ベッドから立ち上がれないほどまでに 心身共に疲れ果てていた 戦争の最盛期には米軍は南ベトナムに５４万人もの兵士を投入していた やがて漸次撤退が始まることになるのだが 私にとっても潮時だった そのころは精神状態がおかしくなっていることを自身で感じていた 手術中の判断力が鈍り動作も鈍くなっていたのである これは医師としてあってはならない状態なので現役から退くことを決心し 長期休暇を申請して一旦ヒューストンに帰ることにした | |
| 11 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:49:04 |
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ヒューストンでは体調が戻るまで陸軍病院に入院することに決めた
佐官級の病室は一流ホテル並みの豪華さで次の間つきだった 母は元看護婦だったのでアメリカの病院を見たいと思うのではないかと考え 許可を取れたと伝えると大喜びで飛んできた 一緒にマイアミへ行き ニューヨークではメトロポリタンでオペラを観劇したりした 母はメキシコ湾で獲れる大きな海老や蛤を満喫して東京へ帰っていった ヒューストンでは３か月ほどゆっくり時を過ごしたが 体力は回復したもののやる気は全くといって良いほどなくなっていた そこで完全に退役することに決め 陸軍メディカル本部にでかけて退役申請を行った 知り合いは誰もいなかったにも拘わらず退役パーティを催してくれることになり パーティでは将官クラスを含めて全員第一種軍装に身を整えたうえに 軍楽隊まで準備してくれた その席上、陸軍最高勲章、議会最高勲章ほかいくつかの勲章を授与されたのである 一佐官に対しては極めて異例なことだと教えられた | |
| 12 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:50:09 |
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赴任期間はわずか４年とちょっとだったにもかかわらず
その１０倍もの時間を働いたような気がした もしあのままベトナムにいたら おそらく麻薬に染まり廃人寸前まで追い込まれていたのではないかと思う サンフランシスコのS大病院に戻る気にはなれなかったし かといってK大病院に戻る気にもならなかった ４年間数多くの外科手術をこなしたとはいえ産科の経験だけはなかったので 父の元で一からやり直すことを考えたのである 父の喜ぶ顔を見たかったこともあった 産婦人科病院は全てが柔らかく平穏だった 窓からは隅田川に遊覧船が行き来するのが見えたし 水天宮道りの車の騒音でさえが快く感じられた 子供頃から見慣れた風景であるにもかかわらず まるで別世界に入ったような気がしたものである しかしベトナムが頭から消え去ることは遂になかった 悪夢で目が覚めることが頻繁にあったし 引退して既に久しい今も悪夢を見ることがある | |
| 13 三銃士参るさん | 2016/04/24(日) 14:55:52 |
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私は幼ない頃に東京下町を襲った東京大空襲を身近に経験している
一夜にして１０万人の命が失われ１００万人が被災した真っ只中で生き残った 東京市には遺体を収容する能力がなく 病気の蔓延を防ぐために 街の辻々の中心に敷かれたブリキ板に死体を山積みにし ガソリンをかけて燃やした ガソリンが足りないために 死体の表面を焼き焦がす程度でしかなかった 昼夜漂う異臭を今でも思いだすことがあるが そのたびに嘔吐感を催す 成人してからはベトナムでの多数の殺傷を目のあたりにした 道路で車に引き殺された犬猫の死体を見ると その瞬間ベトナムに戻ったような気がすることがある 生きることと死ぬことの間には何の線引きもない 今は生死に境はないとはっきりいえる その間を行ったり来たりする人間を何人も見てきたからだ | |
| 14 鉄仮面さん | 2016/05/10(火) 14:16:51 |
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こういう人生もあるんだなあ。
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| 15 竹光さん | 2016/09/27(火) 20:04:35 |
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エピソードの矛盾点が多すぎてどこからツッコミを入れたらいいのか分からない…
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